同業者の皆様へ 運営会社

Web制作会社の営業戦略を見直す方法:制作提案を集客・運用支援につなげる

Web制作会社の営業戦略を、制作提案から集客・運用支援へ広げる視点で解説。KPI設計、既存顧客深耕、相談前チェックも整理します。

Web制作会社の営業を強化しようとすると、つい「テレアポをどう回すか」「紹介をどう増やすか」といった獲得手法に意識が向きます。ですが、制作会社の収益を本当に左右するのは、新規をどれだけ取るかよりも、1件の制作案件を、その後の集客・運用支援へどれだけつなげられるかです。

「作って終わり」で単発の制作費だけを積み上げるモデルは、案件が途切れれば売上も途切れます。一方、制作を入口に運用・改善・再提案まで広げられれば、1社あたりの取引は長く・深くなり、売上は安定します。この記事では、営業手法の列挙ではなく、制作提案の中に"次の支援の根拠"を仕込み、単発受注から継続支援へ移るための営業戦略の見直し方を整理します。Web制作会社・支援会社の営業責任者に向けた内容です。 なお、ここでいう営業は、制作受注を取る活動だけでなく、公開後に顧客と関係を続けながら次の支援を提案する活動まで含みます。営業を「受注の瞬間」でなく「取引の一生」で捉えるのが、本記事の出発点です。

この記事でわかること

営業を「受注件数」でなく「1社あたりの継続収益」で設計する考え方 制作前ヒアリングを、KPI・公開後の改善テーマへ変換する方法 提案書に「次の運用・改善支援の根拠」を仕込む設計 新規開拓・既存深耕・紹介強化の、優先順位の付け方 自社の営業戦略を見直す診断と、外部に相談すべきタイミング

制作会社の営業戦略でまず押さえる結論

結論からお伝えします。制作会社の営業で見直すべきは、獲得チャネルの前に、「制作を単発で終わらせず、継続支援につなげる設計があるか」です。

制作費は一度きりの売上ですが、運用・改善・広告支援は、続く限り毎月の売上になります。前者をフロー、後者をストックと呼びます。 制作売上は、大きく入っても、入った瞬間から次の案件を探す必要があります。継続収益は、額は小さくても積み上がり、複利のように効いてきます。制作単価を上げる努力より、1社との取引を長く続ける設計のほうが、収益への影響は大きいことが少なくありません。しかも、既存顧客への再提案は、新規開拓より圧倒的に低コストで成約しやすい。 一般に、新規顧客の獲得には、既存顧客の維持より何倍ものコストがかかると言われます。にもかかわらず、多くの制作会社が「公開したら次の新規案件へ」と動き、せっかくの継続機会を逃しています。 実際、制作後の運用・保守まで手がける会社は制作会社の数ほど多くなく、「作って終わり、更新もままならない」サイトが世の中にあふれています。これは裏を返せば、運用・改善を提案できる制作会社にとって、大きな余白があるということです。「作って終わり」が当たり前の市場だからこそ、公開後も伴走する会社は、それだけで差別化になります。

まずは、制作提案を継続支援につなげる設計があるかを点検することから始めます。いきなり営業手法を変える前に、自社の「受注のあと」がどうなっているかを見直すと、伸びしろが見えてきます。サイト制作後の改善運用の中身を詰めたい場合は、サイト戦略の記事が参考になります。

この記事もおすすめWebサイト戦略:CV導線・LP・フォーム・コンテンツの設計制作提案に組み込む、公開後のサイト改善・運用の中身を解説します。この記事を読む

営業を「受注件数」でなく「継続収益」で設計する

多くの制作会社は、営業目標を「今月の受注件数」や「制作売上」で見ています。ですが、それだけだと、案件が終わるたびにゼロからの新規開拓に戻る「フロー型」のままです。

見るべき数字を、1社あたりの取引額(LTV)と、運用・改善などの継続収益の割合に変えると、営業の打ち手が変わります。==制作だけの単発売上(フロー)に、運用・保守・改善という積み上がる売上(ストック)をどれだけ乗せられるか==。理想は、毎月の固定的なストック収益で会社の基礎コストをまかない、新規の制作売上を成長と投資に回す形です。この視点を持つと、「受注して終わり」ではなく「受注は継続支援の入口」と営業全体を捉え直せます。ストックが積み上がれば、新規が一時的に落ち込んでも、事業は安定します。受注の波に一喜一憂しなくて済むようになり、社員の働き方も安定します。 営業のリソースにも余裕が生まれます。毎月ゼロから新規を追い続ける状態と、既存の継続収益が土台にある状態では、同じ受注額でも精神的・経営的な安定感がまるで違います。継続収益は、次の挑戦への原資にもなります。

ワンポイントアドバイス:制作会社の営業を相談されるとき、私はまず「公開から半年後も、その顧客と毎月取引がありますか」と尋ねます。ここがゼロに近いほど、継続支援の設計が抜けているサインだからです。

制作前ヒアリングを、KPI・改善テーマに変換する

継続支援の種は、受注後ではなく、初回のヒアリングで蒔きます。「どんなサイトにしたいか」だけを聞くと、制作で関係が終わります。聞くべきは、その先の事業課題です。 顧客がサイトを作りたいのは、サイトが欲しいからではなく、その先で問い合わせや売上を増やしたいからです。表面の要望の奥にある「本当に解決したいこと」を聞き出せるかが、提案の深さを決めます。

「サイトで何件の問い合わせを増やしたいか」「いまの商談化率は」「公開後、誰がどう運用するか」「競合と比べて何で勝ちたいか」——こうした事業の数字や狙いを聞いておくと、制作の目的がKPIになり、公開後に「KPIが届いていないので改善しましょう」という再提案の根拠になります。ヒアリングシートに、事業課題とKPIを書く欄を1つ足すだけでも、営業の質は変わります。ヒアリングを"要望の確認"でなく"課題とKPIの把握"に変えるだけで、制作は継続支援の入口に変わります。 しかも、事業課題まで踏み込んでヒアリングする制作会社は、顧客から見て「ただ作る会社」とは違って見えます。提案の初期段階で信頼を得やすくなり、受注率そのものも上がる、という副次効果もあります。ヒアリングに3Cやカスタマージャーニーを使うと、課題の整理がしやすくなります。

この記事もおすすめWeb戦略フレームワーク:3C・カスタマージャーニーの使い方営業ヒアリングで使える、課題整理のフレームを解説します。この記事を読む

提案書に「次の支援の根拠」を仕込む

制作の提案書は、制作の範囲だけを書いて終わりにしないことが大切です。公開はゴールではなくスタートだと示し、公開後にやるべきことを提案書の中にあらかじめ位置づけておきます。

具体的には、提案書に「公開後3か月で見るKPI」「達成しなければ行う改善メニュー」「半年後に検討する施策(広告・SEO・LP改善)」を、最初から書き添えます。こうしておくと、公開後の運用提案が「急な売り込み」ではなく「最初の約束の続き」になり、顧客も受け入れやすくなります。売り込まれた感がないぶん、関係も長続きします。提案書は、受注のためだけでなく、次の取引の伏線を張る場所です。 この一文を書き添えるだけでも、顧客は「この会社は公開後も伴走してくれる」と感じます。逆に、制作範囲しか書かれていない提案書は、暗に「公開したら関係終了」と伝えているのと同じです。提案書は、会社の姿勢が表れる場でもあります。制作前ヒアリングと運用メニューの対応は、次のように整理できます。

制作前に聞くこと 提案書に仕込む次の支援
増やしたい問い合わせ数 公開後のCVR改善・LP改善メニュー
いまの集客チャネル SEO・広告など流入支援の提案
公開後の運用体制 更新代行・保守・運用代行
商談化・受注の状況 計測設計・CRM連携・改善レポート

新規開拓・既存深耕・紹介の優先順位

営業リソースは限られています。新規開拓・既存深耕・紹介強化のどれに比重を置くかは、自社の状況で決めます。

営業の方向 コスト 単価・成約 向いている状況
新規開拓 高い 単価読みにくい 顧客基盤が薄く母数が要る
既存深耕 低い 成約しやすい 制作実績はあるが継続が弱い
紹介強化 質が高い 満足度の高い顧客がいる

多くの制作会社にとって、最も費用対効果が高いのは既存深耕です。新規開拓を否定するわけではありませんが、優先順位として、まず手をつけるべきは既存です。すでに信頼関係があり、サイトの状況も分かっている顧客への運用・改善提案は、新規開拓より成約率が高くなります。==まず既存顧客への再提案で継続収益の土台を作り、その安定を元手に新規開拓へ広げる==のが、堅実な順番です。 新規開拓は時間も費用もかかり、成約も読みにくい一方、既存顧客は、すでに自社の仕事ぶりを知っています。「あのサイト、その後どうですか」の一言から、改善提案が始まることも少なくありません。眠っている既存リストは、最も近くにある営業資産です。過去に制作した顧客を一覧にして、最終接点の日付を書き出すだけでも、再提案できる相手が見えてきます。しばらく連絡していない顧客ほど、サイトが古くなり、改善の余地が大きいものです。提案ストーリーの具体例を見たい場合は、事例の記事が参考になります。

この記事もおすすめWeb戦略の事例から学ぶ:アクセスを問い合わせ・商談につなげる改善パターン提案に使える、課題別の改善パターンを整理しています(仮のモデルケース)。この記事を読む

公開後レポートと、再提案のタイミング

継続支援を「気合い」で続けるのは難しいものです。仕組みにするために、公開後の定例レポートを提案の標準に組み込みます

月次または四半期で、KPI(問い合わせ数・流入・CVRなど)の推移を顧客へ報告する場を持つと、そこが自然な再提案のタイミングになります。毎回ゼロから売り込むより、定期的な接点の中で「次はここを直しましょう」と提案するほうが、顧客の負担も少なく、話がスムーズに進みます。「問い合わせが目標に届いていないので、LPを改善しましょう」「流入が頭打ちなので、広告を試しましょう」と、データを根拠に次の施策を提案できます。感覚や売り込みではなく、顧客自身の数字を見せながら提案するので、納得感が高く、断られにくくなります。レポートは作業報告ではなく、次の支援を提案する営業の場として設計します。報告して終わりにせず、必ず「次にやるとよいこと」を一つ添えると、レポートが営業として機能します。これを続けると、顧客は「作った会社」から「ずっと相談する会社」へと関係が変わります。 この関係になれば、価格だけで他社に乗り換えられるリスクも下がります。毎月数字を一緒に見て、改善を重ねた相手を、わざわざ替える理由はないからです。継続支援は、収益だけでなく、顧客との関係そのものを強くします。公開後の運用をロードマップ化したい場合は、設計の記事へどうぞ。

この記事もおすすめWeb戦略設計の進め方:ロードマップの作り方公開後の運用支援を、顧客へ提示するロードマップへ落とす方法を解説します。この記事を読む

営業・ディレクター・マーケの役割分担

継続支援の設計は、営業担当だけでは回りません。受注を取る営業、制作を仕切るディレクター、公開後の数字を見るマーケ担当(または運用担当)が、同じKPIを見て連携する必要があります。部署や担当がバラバラのKPIを見ていると、提案の足並みがそろいません。

営業がヒアリングで課題とKPIを引き出し、ディレクターがそれを制作要件に落とし、運用担当が公開後のレポートで改善提案につなげる。このバトンがつながっているかが、継続収益の分かれ目です。 小さな会社なら一人が複数の役割を兼ねることもありますが、その場合でも「公開後に顧客の数字を見る人」を必ず決めておくことが大切です。担当が決まっていない仕事は、結局誰もやらないまま放置されます。「みんなの仕事」は「誰の仕事でもない」になりがちです。役割がぶつ切りで、公開後に誰も顧客を見ていない状態だと、どれだけ良いサイトを作っても、関係はそこで終わります。 制作の品質と、継続の仕組みは別物です。良いものを作る力があるのに継続につながらない会社は、作る力ではなく、つなぐ設計が足りていないことがほとんどです。広告・運用支援まで広げる場合の媒体・LP設計は、広告戦略の記事が参考になります。

この記事もおすすめWeb広告戦略:短期流入と予算配分の考え方制作後に広告運用支援へ広げる場合の、媒体選定と予算配分を解説します。この記事を読む

よくある失敗例と、その回避策

制作会社の営業でつまずきやすいポイントを挙げておきます。

最も多いのが、獲得手法ばかり強化して、継続設計が抜けるケースです。新規を取っても継続がなければ、常に自転車操業になります。まず既存深耕の仕組みを作ります。穴の空いたバケツ(継続なし)に新規という水を注ぎ続けても、いつまでも満たされません。新規と継続は、どちらかではなく順番の問題です。次に、ヒアリングが要望確認で終わるケース。事業課題とKPIを聞かないと、再提案の根拠が残りません。そして、提案書が制作範囲だけのケース。公開後の改善を最初に書かないと、運用提案が唐突になります。最後に、公開後に誰も顧客を見ていないケースです。レポートの場がないと、再提案のきっかけそのものが生まれません。これらに共通するのは、目の前の受注に追われて、公開後の関係づくりを後回しにしていることです。継続支援は、忙しいときほど仕組みで回す必要があります。

自社の営業戦略を見直す診断

自社の営業がフロー型に偏っていないか、次の観点で点検してみてください。当てはまる項目が多いほど、継続支援の設計に伸びしろがあります。ここで弱点が見つかっても、悲観する必要はありません。むしろ、まだ手をつけていない継続収益の余地がそれだけ残っている、ということです。

点検したいのは、案件単価が下落していないか、顧客の継続率(公開後も取引が続く割合)を把握しているか、既存顧客への再提案メニューがあるか、公開後のKPIを計測できているか、です。

点検する観点 フロー型に偏っている兆候
案件単価 値下げ競争に巻き込まれ単価が下落
顧客の継続率 公開後の取引がほぼゼロで把握もしていない
再提案メニュー 既存顧客に提案できる運用・改善の型がない
計測環境 公開後のKPIを誰も見ていない
役割分担 公開後に顧客を担当する人がいない

これらが曖昧なまま新規開拓だけを強化しても、売上は安定しません。穴をふさがずに水を足し続けるのと同じで、努力の割に成果が積み上がらないからです。まずは継続率という穴の大きさを把握するところから始めましょう。営業の見直しは、新しいチャネル探しより、既存の取引を継続収益に変える設計から始めるのが効果的です。 新しい営業チャネルを増やすのは、その土台ができてからでも遅くありません。まず足元の取引を深め、安定したキャッシュフローを作ることが、攻めの営業を支えます。

相談前セルフチェック

営業目標を、受注件数だけでなく1社あたりの継続収益でも見ているか 初回ヒアリングで、事業課題とKPI(問い合わせ・商談化)を聞けているか 提案書に、公開後の改善メニューと再提案の根拠を書いているか 既存顧客への運用・改善の再提案メニューがあるか 公開後にKPIを報告する定例レポートの場があるか

よくある質問

Q. 制作会社の営業は、何から見直せばよいですか?

新規の獲得手法より先に、「制作を継続支援につなげる設計」から見直すことをおすすめします。初回ヒアリングで事業課題とKPIを聞き、提案書に公開後の改善メニューを書き、公開後のレポートで再提案する——この流れを作ると、単発受注が継続収益に変わります。

Q. 新規開拓と既存深耕、どちらを優先すべきですか?

多くの制作会社では、まず既存深耕が費用対効果に優れます。信頼関係があり状況も分かっている顧客への運用・改善提案は、新規より成約しやすいためです。既存で継続収益の土台を作り、その安定を元手に新規開拓へ広げる順番が堅実です。

Q. どの指標を見るべきですか?

受注件数や制作売上だけでなく、1社あたりの取引額(LTV)、顧客の継続率、運用・改善などの継続収益の割合を見ます。これらが見えると、フロー型からストック型への移行が進んでいるかを判断でき、来期の経営計画も立てやすくなります。

Q. 提案書には何を書けばよいですか?

制作範囲に加えて、公開後3か月で見るKPI、達成しなければ行う改善メニュー、半年後に検討する施策(広告・SEO・LP改善など)を書き添えます。最初に書いておくと、公開後の運用提案が「約束の続き」になり、受け入れられやすくなります。逆に、これらを公開直前や公開後に初めて持ち出すと、「最初の見積もりと違う」と身構えられがちです。タイミングは、最初の提案書がベストです。

Q. いつ外部に相談すべきですか?

公開後のKPIを計測できていない、再提案のメニューがない、運用支援のノウハウが社内にない——こうした状態のときは、計測設計や運用メニューの整備を外部の知見と進めると、継続支援への移行が早まります。自社にない領域(広告運用やデータ分析など)だけを外部と組み、顧客との関係は自社が持つ形も有効です。

まとめ

Web制作会社の営業戦略の見直しは、獲得手法の強化ではなく、制作を継続支援につなげる設計から始めると効果が出ます。営業を受注件数でなく1社あたりの継続収益で捉え、初回ヒアリングで事業課題とKPIを聞き、提案書に公開後の改善メニューを仕込む。そして既存深耕を軸に、定例レポートを再提案の場にする。この設計があると、単発の制作費に、運用・改善という積み上がる売上が乗り、事業は安定していきます。そして安定した事業は、無理な値引きや無理な受注をしなくて済むぶん、作るものの質も上がるという好循環を生みます。

まずは「公開後の顧客との接点があるか」を見直すだけでも、次の一手が見えてきます。

自社の営業導線に合わせて、制作提案を継続支援へつなげる設計を整理したい方は、現状の確認からご相談ください。

参考にした公式情報

執筆者情報
LOads 代表取締役 綱脇 耕輔

執筆者情報

LOads 代表取締役 綱脇 耕輔

Webマーケティング会社・大手Web系企業を経て独立し、デジタルマーケティング業界で14年のキャリア。2018年より東京・福岡を中心に、Web広告運用やSEO対策・AIO対策などのデジタルマーケティング支援を大手・中小企業問わず行っています。100社以上のマーケティング支援の現場で得た知見をもとに、独自の知見とナレッジでコラムを発信しています。

登録が完了しました。

ログインしました。

LOadsへの登録が完了しました。

ログイン用リンクをメールで送信しました。

請求情報を更新しました。

請求情報は更新されませんでした。